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ポプラの介護教室

介護教室(認知症について 第6回)

2021-10-30
こんにちわ。朝晩の冷え込みも、日ごとに募ってきました。
新型コロナウイルスの感染者も落ち着き、少し安心が出来ましたね。
今後もしっかりと感染予防を意識し、また蔓延しないように心がけていきましょう。

今回は、「前頭側頭型認知症」について詳しい概要から話したいと思います。
大脳皮質は前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉に区分されます。
アルツハイマー型認知症が大脳皮質全体が徐々に萎縮していくのに対して、前頭葉と側頭葉に限局して一方あるいは双方が萎縮する病態です。
やはり、残存神経細胞にはタウ蛋白やTDP-43、FUSと言われる異常蛋白が蓄積されている事が知られていますが、なぜこのような変化が起こるかは解っていません。
また、一部の前頭側頭型認知症の患者さんで遺伝子異常が認められ、遺伝する事もわかりました。
しかし、日本では遺伝子性のものは、ほとんど認められません。

脳の前頭葉は思考や人格、理性、感情に関わる部分です。
また、側頭葉は言語や記憶、聴覚を司ります。
この部分が萎縮する事で、人格(人格変化)や行動(行動障害・運動障害)、言葉(失語)に変化が見られます。
前頭側頭型認知症は発症してからの寿命は、平均して6~9年と言われています。
根治療法は確立していなく、緩徐進行型の経過をたどります。

【症状】
人格変化
・自分本位な行動や、万引きなどの反社会的な行動をとるようになります。(脱抑制・反社会的行動)
・無関心、自発性の低下。
・共感や感情移入が出来なくなる。

行動障害
・同じ行動や言葉を繰り返したり、同じ時間に同じ行為を毎日行う時刻表的生活が認められた莉します。(常同行動)
・一つの行為を持続して続ける事が出来ない注意障害が見られます。
・外的刺激に対して反射的に反応し、模倣行動や脅迫的言語応答が見られます。
・食事や嗜好の変化が見られます。

言語障害、意味記憶障害
・言葉が出にくくなる。(失語症状)
・経験とは関係のない知識の記憶がなくなってきます。例えば「1分は60秒です」などです。(意味記憶障害)
・物の名前が言えない。(語想起障害)

これ以外にも、身体が震えたり動作がゆっくりになる『パーキンソン症状』や、筋力が低下したり体がつっぱたりする『運動ニューロン症状』が現れることがあります。

四大の中では、家族の気持ちを考えると一番ビックリする認知症かも知れませんね。
病気の影響で『理性的な行動』が取れなく、人格がほとんどの方が変わってしまうため困惑すると思います。
認知症ケアに特化しているグループホームで生活する事をお勧めします。
前頭側頭型認知症は「前頭側頭葉変性症」という名前で指定難病にも登録されています。
そのため申請する事で医療費の助成を受けることが出来ます。

前頭側頭型認知症の方のケアのポイントとして、病気の特性を生かして先回りの対応を対策するとトラブルを減らす事が可能かなと思います。
常同行動が初期や中期にある場合は、そのこだわりを尊重したスケジュールを立てたりと日常生活を乱さないようにしてあげる事は大切です。
私自身、携わったケースは2件しかないので100の事は言えませんが、確かにビックリした事がありました(笑)
なかなか、「もしかしたら、こうしたいのかな?ああしたいのかな?」の予測が立たなかったですが、共感する事と受け入れる態度を示す事が有効で楽しかったです。

内服薬は、抗うつ病薬で一部の行動を和らげる効果があります。
今までもお話ししましたが、治す薬はありません。


では、薬についてもお話したいと思います。
意見は綺麗に二つに分かれると思いますが、私は薬は必要と思います。
介護をする人が楽になるためにではありません。

確かに、服薬を止めて良くなったケースがありますが、それは内服の量や種類がその人に合っていなかったからだと思います。
過去に、ポプラでもそのケースがありました。
服薬を止めた事で落ち着いたケースも確かにあります。
今は認知症の研修が多くあり、その人に合った対応を理解するためのアセスメントを勉強し薬任せにしない事が尊厳とされています。
確かにその通りなのですが、正直薬を使用しないと本人の心も体も壊れてしまうとこの13年で確信しています。
介護を始めた頃『3日寝なくても、眠くないなら起きてても良い』と思っていて、それが認知症の人と付き合う事で優しさだと本気で思い込んでいました。
でもそれは、大きく間違っている事に気が付きました。

『病気だから寝なくても仕方ない』そんな訳ないんです。
やはり人間の体は、日中起きていて夜間は休む事が大切なんです。
認知症になった方のほとんどが、何かしらの疾患があり寝ない生活をする事で間違いなく悪化していきます。
認知症の睡眠は、私はとても大切な事と考えています。
眠る事で、脳の大脳皮質を休ませ回復させる事が出来ます。
睡眠不足になると、脳が休息できず更に適切に働かなくなることで認知症の方はどんどん悪化すると個人的に強く思います。
体内時計も滅茶苦茶になり、認知症状の理由だけではなく、イライラしたり記憶障害も悪化すると個人的に思います。

不眠について、死んだ私の母も苦しんでいましたので利用者や患者からの推測だけではなく、母が少しでも楽になるように私なりに調べたり医者に相談しました。
不眠状態を続けた世界記録があるんですよ(笑)アメリカの男子高校生が挑戦したのですが、不眠状態を続けた記録が11日と12分(笑)実験開始から3日で記憶力が大幅に低下し、4~5日目には極度のイライラ状態に。
6日目には白昼夢をみたり9日目には視力低下や被害妄想が現れ、最終日辺りは極度の記憶障害が現れたり、簡単な計算も出来なくなったそうです。

認知症を直す薬はありません。
記憶障害や失語症を直す薬もありません。
日中に活動的な行動をし、自然に夜間眠るようにするのは理想です。
ただ、日中に活動しても眠れないケースもあります。
眠る状態を環境整備しても寝付けないケースもあり、私はここで夜間寝るための薬は絶対に必要だと思います。
結果、苦しいのは本人だからです。
周りで世話をする人が大変だからではありません。
不眠は、精神状態も身体状態も悪化させるからです。
その方の状態に合った薬を見つける事が、なかなか大変なのですが。
効きすぎたり効かなかったりと、一発で見つかる事はほぼないので…。でも、その方がその人らしく生活出来る薬を見つける事が重要と思います。

長くなってしまいましたが、次回は看取りについてと私が見
てきた色々な認知症のケースもお話ししたいと思います。

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